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ある論文の共著

ジョンとキースの二人は、ともにエンジニアであり、有名大学の教員であった。二人はその大学からの終身教授権を求めていた。終身教授権取得の条件の一部として、彼らは学術専門雑誌にオリジナルな論文を公表するよう求められていた。
ジャンは大学院生のときに、未発表の論文を書いたが、彼には今や、それが雑誌で公表すべき素晴らしいトピックであると思われていた。ジャンはこのアイディアをキースと議論し、彼らはともにその論文を改訂していこうということで同意した。
その論文を最新のものに仕上げるための改訂作業のほとんどはジャンが行った。キースの貢献はごく小さいものに過ぎなかったが、キースが終身教授権を獲得する機会を向上させるために、ジャンはキースの名前を共著者の名前に入れることに同意した。その論文はアクセプトされ、その後ある科学雑誌で公表された。
ジャンが雑誌の論文を載せるために大学院時代の仕事に立ち戻ったことは倫理的といえるだろうか。ジャンの学位論文の主査の名前もなんらかの形で明記されるべきだろうか。またそうするべきだとしたら、そういった形でなされるべきだろうか。ジャンはこの論文の中で彼の学位論文に対する奨学金の提供先を明記するべきだろうか。キースに論文の改訂の手助けを依頼したことについてジャンは責任があるだろうか。ジャンとキースは共同研究の開始にあたってどれだけ意見が一致していただろうか。ジャンがキースの名前を共著者として明記したことは非倫理的な、あるいは分別を欠く行為だったろうか。

−NSPE事例85-1番からの改作

(訳 須長一幸 日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学))