公共の安全に対する責任とクライアントに対する守秘義務
あるアパートのテナントが、建物の所有者に、騒音問題で建物を修繕するよう訴えた。それは安全に関わる問題というほどのものではなかった。所有者の弁護士は、構造建築工学のエンジニアであるドゥシャヌを雇い、建物の検査と証言を依頼した。
検査の最中に、ドゥシャヌはその建物に深刻な構造的問題があるのを発見した。それはテナントの安全にとって差し迫った脅威であった。しかしながら、これらの問題は、テナントの訴訟においては言及されていなかった。
ドゥシャヌは何をするべきか?ドゥシャヌは弁護士に情報を報告すべきか?所有者に対してか?テナントに対してか?
ドゥシャヌがこの情報を弁護士に報告したとしよう。そして弁護士がドゥシャヌに対して、この情報は訴訟に影響するかもしれないから秘密にしておくよう言ったとしよう。
今、ドゥシャヌは何をすべきだろうか?
この問題を、ドゥシャヌの公共の安全に対する職業的責任も、また彼のクライアントに対する守秘義務も損なうことなしに解決する手段はあるだろうか?
エンジニアのクライアントに対する守秘義務という職業的義務は、弁護士の守秘義務とはどう違うのだろうか?
―NSPE倫理審査会事例90-5番からの改作
(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)
|